直島セミナー2023の参加者の体験記

岡山大学病院 初期研修医 八井田覚

2023年8月26日・27日に麻酔・集中治療セミナーin直島に参加させていただきました。美しい自然と芸術の島で麻酔・集中治療の講義やハンズオン、特別講演など非常に貴重な経験をさせていただきました。

初日は午前中に呼吸と循環の講義があり、気道確保や循環管理の基礎をわかりやすく説明して頂きました。午後には呼吸困難とショックのケースシナリオの講義があり、午前に学んだ事をアウトプットすることで、実際にどのような状況で午前の知識が必要になるかを学ぶことが出来ました。非常にためになる話ばかりで、初期研修のこの時期に学ぶことが出来て大変うれしく思います。また、ランチョンセミナーでの秋吉先生のご講演と夕食後の牛場先生のご講演は非常に興味深く、麻酔と広い視野を持つことの重要性を実感することが出来ました。

2日目は森松教授のジャーナルクラブでは血液透析と血液透析ろ過の比較論文の抄読と教授の留学体験も交えられて講演していただき、Evidence Based Medicineについて貴重なお話を拝聴しました。その後、PICCやCVの穿刺、経皮的気管切開と声門上器具を使用したした挿管のハンズオンをさせていただきました。ハンズオンの前に、手技の意義やコツを講義していただいたので、ただ漫然と体験するのではなく、状況や困難な点を想定しながら主義を学ぶことが出来ました。

美しい島を満喫し、麻酔・集中治療の知識を学ぶことが出来ただけでなく、多くの先生方と出会い、交流をすることができ、大変有意義な2日間を過ごせました。この度は参加させて頂きありがとうございました。

岡山大学病院 麻酔科蘇生科 レジデント 菊池 茉優

 8月26日、27日に直島で開催された麻酔・集中治療セミナーに参加させていただきました。研修医の頃は機会に恵まれず、今回が私自身初めての参加でしたので、研修医の先生方と同様にフレッシュな気持ちで2日間を楽しみにしておりました。

1日目、まずは大学病院に集合したのち、バスに乗り込み宇野港から直島へ向かいました。快晴の空のもと、新進気鋭の25名の研修医の先生方とお会いしました。全員のお名前を覚えることを目標に、皆さんとの会話を目一杯楽しみました。直島到着後、ベネッセハウスへ移動し、早速講義が始まりました。

まず、成谷先生から気道確保困難についてご講義いただきました。マスク換気困難かつ気管挿管困難(CVCI:cannot ventilate, cannot intubute)という絶体絶命の状況において麻酔科医はどのように考えて行動していけばよいか、また、麻酔導入前にCVCIの可能性を予測するにはどのような点に着目すればよいかといったことを、気道管理アルゴリズムに沿ってわかりやすく教えていただきました。事前の評価と十分な準備、アルゴリズムに沿った冷静な対応が非常に重要であることを学びました。

次に片山先生から循環動態の指標についてご講義いただきました。麻酔管理において、輸液の多寡は常に考慮すべきことであり、今回静的指標と動的指標に分けてわかりやすくまとめて下さったことで頭の中を整理することが出来ました。SVVとFrank-Starlingの法則についても触れて下さり、SVVの有用性や注意点についても知れたので、早速今後の麻酔に活かしていこうと思っています。

3個目の講義は、吉田先生から酸素需給バランスについて学びました。もともと苦手意識があり自身でも教科書を読んで理解しようとしてきた分野であったものの、評価する項目が多く煩雑な計算式も相まって消化しきれておりませんでした。吉田先生は私が躓いていたところを含め大変簡潔かつ丁寧にまとめて下さっており、また実際の症例に当てはめて具体的な数字を出しながら理解できるように説明して下さりました。3講義とも非常に内容の濃い講義で充実した時間を過ごすことが出来ました。

ランチョンセミナーでは、福岡大学医学部麻酔科学教室の秋吉浩三郎教授にご講演いただきました。麻酔の歴史を紐解きながら麻酔の総論的なお話を面白く丁寧にお話して下さりました。留学時代のお話も伺い、今後のキャリアについて考えるきっかけにもなりました。

その後の自由時間では、各々地中美術館に行ったり港近くを散歩したりして直島のアートや自然を満喫しました。ホテルの部屋からは瀬戸内海を一望でき、リゾート気分で素敵なひと夏の思い出を作ることが出来ました。

チェックイン後は再び講義室に戻り、困難気道管理とショック対応の2つのケースシナリオを学びました。それぞれのシナリオに適したトラブルシューティングをクイズ形式で回答していくという流れで、頭をフル回転させながら参加しました。解説も要点をかいつまんだスライドで、午前中の講義内容もおさらいできるような内容になっており大変勉強になりました。

1日目の最後は、慶應義塾大学理工学部の牛場潤一教授にご講演いただきました。牛場先生は脳波を解析して脳卒中後の運動麻痺の機能回復につなげる研究をされており、実際に先生が開発された医療機器を使ってリハビリを続けることで一度は失った運動機能を取り戻した患者さんをみて感銘を受けました。研究の面白さや素晴らしさだけでなく、様々な職種の方々との連携を通して作り上げた結果であるという研究の裏側も教えていただきました。

2日目は森松教授によるジャーナルクラブで始まりました。血液透析と血液ろ過を比較しながら論文の内容をかみ砕いて説明していただきました。森松先生のお話はいつも分かりやすくて、内容がためになるだけでなく、人への伝え方やスライドの魅せ方も非常に勉強になりました。

そのあとは、血管穿刺と気道確保に分かれてハンズオンセミナーを行いました。血管穿刺はエコーを使いながらCVとPICCの穿刺を模型を使って行いました。プレスキャンによる血管選択の重要性を学び、エコーと針を連動させて針先を確実に追う技術を習得する良い機会となりました。気道確保では、声門上器具を介した気管挿管の方法と緊急気管切開の手順を学びました。これらは普段の臨床ではなかなか触れることが出来ないものの、患者の生命に関わる必須かつ専門性の高い技術であるので、この機会に学ぶことが出来て本当に良かったと思います。

直島セミナーの2日間は、知識を吸収する時間、アートや自然に触れる時間、仲間と美味しいごはんやお酒を嗜む時間もあり、夏の思い出として大変充実した時間となりました。このセミナーで得た知識を今後の麻酔に活かし、患者さんにより良い医療を提供できるよう邁進してまいります。