研究の進捗状況

新規バイオマーカーHRG症例数の推移

敗血症治療の現状

敗血症とは、感染に対する宿主生体反応の調節不全で、生命を脅かす臓器障害を示すものと定義されています。
治療を行った場合でも、死亡の危険性は15%程度とされており、重症な場合は40%以上と言われています。
医療が進歩する中、日本における死亡総数の1割は敗血症が占めており、より効果的な治療法が求められています。
敗血症の診断として用いられる検査項目としては、CRP、インターロイキン-6(Interleukin-6, IL-6)、プロカルシトニン(Procalcitonin, PCT)、などがある程度有用とされています。
また、重症度・予後予測マーカーとしては、Sequential Organ Failure Assessment(SOFA)score、Acute Physiology and Chronic Health Evaluation(APACHE)II scoreが広く使用されています。
しかしながら、現在の医療においても確実に敗血症を診断できるバイオマーカーはないと言われています。

HRG(Histidine-Rich Glycoprotein)とは

HRGとは、肝臓で産生される糖タンパク質です。最初の報告は1972年ですが、
それ以降も様々な研究報告がされており、凝固線溶系、免疫系、血管新生の調節などへの関与が考えられ、
体内の詳細な働きについては今後の研究が期待される物質です。

本研究の目的

我々は、HRGが敗血症の優れたバイオマーカーとなる可能性が高いと考えて、HRGに関する様々な研究を行っています。 本研究は、2016年に新たに発表された敗血症の診断基準(Sepsis-3)を使用して、敗血症と診断された患者の血中HRG値を測定し、 HRG測定値とその他の検査項目や症状などの臨床データを比較して、HRGの臨床的意義を考察します。
主評価項目としては、敗血症患者の生存群と死亡群を比較してHRG値の時間的な変動に違いがあるかどうかを調べます。
副評価項目としては、敗血症の原因となった病原体別でのHRG値の変動や一般的な検査値との関連を調べます。
今回も先行研究と同じように複数の病院から幅広い症例を集めて検討を行うことにより、様々な敗血症患者に適応できる意義のある研究になると考えています。

予備研究で明らかになったこと

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 薬理学分野におけるHRGに関する基礎研究※1)から、HRGが好中球の活性に大きく関与することが明らかになりました。
敗血症モデルマウスではHRG値が著しく低下しており、HRGを補充することで臓器障害ならびに生存率が改善するとの結果が得られました。

この基礎研究の結果を受け、岡山大学病院ICUのSIRS患者70名を対象に臨床研究※2)を行い、血中HRG値を測定して検討しました。
結果としては、健常人(n=16)と比較して、SIRS患者(n=70)では血中HRG濃度が有意に低下していました(Median;63.0 [Interquartile range;51.5-66.2] vs 28.7 [15.7-41.5] µg/ml, p<0.01)。
SIRS患者の中で感染症を伴わないSIRS患者(n=50)と比較すると、感染症を伴うSIRS患者(n=20)(旧定義における敗血症患者)では血中HRG濃度が有意に低下していました(33.3 [26.6-45.0] vs 8.71 [6.7-15.7] µg/ml, p<0.001)。
また、SIRS患者の中で生存群(n=62)と比較すると、死亡群(n=8)では血中HRG濃度が有意に低値でした(31.78 [18.57-42.11] vs 9.06 [4.49-15.70] µg/ml, p<0.001)。

その後、ターゲットを敗血症患者に絞り、より幅広いデータ取得のためにORION(Okayama Research Investigation Organizing Network)による多施設共同研究を実施しました。(2014年9月30日~2018年1月13日実施)
結果としては、敗血症患者99例の中で、生存群(n=83)と比較すると死亡群(n=16)では血中HRG濃度が有意に低値でした(30.6 [22.1–39.6] vs 15.1 [12.7–16.6] µg/ml, p<0.001)。
また、HRG値と予後(死亡)とに関連が認められ、HRG低値群では死亡率が有意に高いとの結果も得られました。

これらの結果より、HRGは敗血症の診断そして重症度を評価する新しいバイオマーカーとして、感染症の治療に貢献できる可能性があると考えています。
更に、敗血症の治療において、HRGが新しい治療薬となる可能性にも期待しています。

※1)Wake H, et al. Histidine-Rich Glycoprotein Prevents Septic Lethality through Regulation of Immunothrombosis
and Inflammation. EBioMedicine 2016;9:180-94.

※2)Kuroda K, et al. Decrease in Histidine-Rich Glycoprotein as a Novel Biomarker to Predict Sepsis Among Systemic Inflammatory Response Syndrome. Crit Care Med 2018;46:570-6.

多施設共同研究に向けての取り組み

2018年1月12日に岡山大学研究倫理審査専門委員会にて承認され、Okayama Reserch Investigation Organizing Net work(ORION)プロジェクトの1つとして、2018年3月開催の第8回ORION会議で検討されました。
以下の共同研究機関を含め、今回の研究では全体で200症例の登録を予定しています。

共同研究機関一覧

  • 岡山大学病院
  • 川崎医科大学附属病院
  • 島根大学医学部附属病院
  • 鳥取大学医学部附属病院
  • 愛媛大学医学部附属病院
  • 香川大学医学部附属病院
  • 岡山医療センター
  • 岡山済生会総合病院
  • 岡山市立市民病院
  • 岡山赤十字病院
  • 川崎医科大学総合医療センター
  • 津山中央病院
  • 福山医療センター
  • 福山市民病院
  • 尾道市立市民病院
  • 香川県立中央病院
  • 香川労災病院
  • 姫路赤十字病院
  • 神戸赤十字病院

<順不同>

多施設共同研究マニュアル

step01対象者選択 新基準(2016年 Sepsis-3)に基づいて敗血症と診断された患者
(20歳未満、妊婦は除く)
※感染症により生命を脅かす臓器障害を示すもので、
SOFA scoreが2点以上増加した患者
step01対象者選択

本人又は代諾者の方に説明をして同意を取得

同意書
step01対象者選択 step01対象者選択

SRLより提供された研究用スピッツを使用してください
血液採取後、各スピッツに速やかに分注

Day1 ① 7ml / ② 4ml / ③ 2ml ⇒ 合計13ml
Day3 ① 7ml / ② 4ml ⇒ 合計11ml
Day5
Day7

※症例番号毎にスピッツと依頼伝票はひとつのセットになっています。
 破損などで別の症例番号セットのスピッツを使用した場合には、
 代用する依頼書のコメント欄に正しい研究番号と採血日を記載し、
 有吉までご連絡下さい。

step01対象者選択 依頼書(採血日記入)・
採血スピッツ・回収スピッツ

スピッツと同じ症例番号の記入されたSRL依頼伝票へ
『採取日』のみ記入し検査室へ提出してください
検査室で検体処理(一時保管)→SRLが回収→岡山大学病院バイオバンク

※研究用スピッツの準備には約15日かかるため、
 不足する場合は余裕をもって下記研究窓口までご連絡をお願い致します。
step01対象者選択 インターネット上のREDCapにログイン後、必要項目を入力して下さい。
研究番号と患者との対応表は、各施設で管理をお願い致します。
※非登録症例(検体未提出の症例)はデータベースへの登録は不要です。
お手数ですが、月毎に下記の3点を研究窓口までご連絡ください。
  • 1.ICU入室症例数
  • 2.敗血症登録症例数(20歳未満と妊婦を除く)
  • 3.非登録症例数と非登録の理由(①~④から選択)
    ①同意取得不可
    ②研究用資材不足
    ③マンパワー不足
    ④その他(  )

Q&A

対象者を簡潔に説明してください。
新基準(2016年 Sepsis-3)に基づいて敗血症と診断された患者(20歳未満、妊婦は除く)
※感染症が疑われて、SOFA scoreが2点以上増加した患者
1)敗血症と診断されてICUに入室 ⇒ ICU入室から24時間以内に採血を行う
2)ICU入室後に敗血症と診断 ⇒ 敗血症診断から24時間以内に採血を行う
研究資材が破損あるいは紛失してしまいました。
依頼書とスピッツは全てセット化しておりますので、そのような場合は大変恐縮ですが
新しい症例セットの一部(該当する採血予定日の物)を使用して下さい。
万が一、採血量が足りずスピッツが余ってしまった場合は、その時点で追加採血をお願い致します。
初日採血量:13ml スピッツ3本
3.5.7日目採血:11ml スピッツ2本
詳細は研究プロトコルに記載しています。
新しい症例セットの一部は本来の研究番号(匿名符号)と異なりますので、
代用する依頼書のコメント欄に正しい研究番号と採血日を記載し、有吉までご連絡ください。
また、資材発注には15日程度かかりますので、お早めにお知らせください。
Day 1、5、7は採血出来ましたが、Day 3だけ採血が出来ませんでした。
患者またはご家族から同意の撤回があった場合には研究中止となりますが、
諸事情により採血が出来なかった場合は、REDCapへのデータ入力のみ行ってください。

お問い合わせ先

岡山大学病院 麻酔科蘇生科
多施設共同研究窓口 川上 / 有吉
TEL:086-235-7327
メールアドレス:p1rd35r0@s.okayama-u.ac.jp