ペイン-痛みの基礎研究- ペイン-痛みの基礎研究-

ペイン
-痛みの基礎研究-
Pain Research

Pain Research 痛みに関する研究

痛みに関する研究

私たちペイングループでは読んで字のごとく、痛みに関する研究をしています。“痛み”は医療が発達してきた現代においても、十分解明されていない、個人差の大きく複雑な概念です。ここで扱う痛みとは主に外見上のキズやケガは治ったのにもかかわらず治まらない痛みや痺れを意味しています。痛みは患者さんの生活の質を下げることはもとより、社会全体の経済的損失につながることも既に示されています。
痛みの適正な管理は、我々麻酔科が担ういずれの分野においても大事な課題となります。
臨床ではペインクリニックでこのような痛みを診療していますが、症状や原因は様々であり、そもそも原因不明の場合も多く、試みる治療方法も多岐に渡ります。どの治療方法が最善なのか、どの程度効果があるのかなども症例によって実に多様であるため正解にたどりつくことが難しく、痛みは社会全体で早急に解決されるべき問題であるにもかかわらず、薬剤や装置が進歩してきた現在においてもまだまだ十分な治療法が確立していない分野です。

痛みの適正な管理は、
我々麻酔科が担ういずれの分野において大事な課題となります。
我々は、いくつかのテーマから
痛みの基礎医学研究を行っております。

痛みの慢性化メカニズムに関する研究 痛みの慢性化メカニズムに関する研究

痛みの慢性化メカニズム
に関する研究

私たちの研究室では、様々な原因から痛みが慢性化する機序についての研究を行っています。例えば、怪我をした後に表面的には傷が治っているのに何ヶ月たってもそこが痛む、さらに痛みの範囲がどんどん大きくなる、といった患者さんがいますが、ガンなどと異なり痛みの治療ではそこを切除して調べるわけにはいきません。そのため以下のような様々な動物モデルを用いて神経やその他の組織でどのような異変が起きているのかを調べます。これまでに神経障害性痛モデル、術後遷延痛モデル、化学療法誘発性末梢神経障害モデルなどを用いて、慢性痛におけるパルス高周波療法の適正化、脊髄グルタミン酸トランスポーターと下行性疼痛抑制系との関係などの結果を発表しています。

オピオイド耐性に関する研究 オピオイド耐性に関する研究

オピオイド耐性に関する研究

麻薬の耐性に関する研究を行っています。フェンタニルをはじめとする強オピオイドは、がん性疼痛、ペインクリニックだけでなく、術中術後の鎮痛にも用いられるため、麻酔科医と深い関わりがあります。非常に有用な薬ではありますが、耐性が起こりやすいことが大きな問題となっています。耐性を逃れるために、臨床の現場では違うオピオイドに切り替えるオピオイドスイッチングが行われております。オピオイド間の最適な組み合わせについてはいまだ十分な研究がなされておりません。

我々は国立がん研究センターがん患者病態生理研究分野(現東京慈恵医科大学疼痛制御研究講座)上園ラボとの共同研究を経て、オピオイドが複数の受容体シグナル伝達に与える影響について研究をしてきました。鎮痛効果に寄与するGタンパク質依存経路、耐性に関わるとされるβアレスチン経路の2つのシグナル経路に対して、オピオイド受容体を発現させた細胞を用いてその薬理学的作用を解明しようとしています。様々な組み合わせの複数のオピオイドを投与することが受容体の薬理学的性質にどのような影響を及ぼすかを、共焦点レーザー顕微鏡やウェスタンブロットなどを用いて比較検討しています。

痛みの分野はまだまだわからないことが多く、
だからこそ可能性に満ちており興味が尽きない分野でもあります。
課題は山積していますが、少しずつでも社会に還元できる成果を出せるよう、
日々努力を続けております。