集中治療部 (ICU)
概要
岡山大学病院集中治療部は、1971年に日本の中では先駆け的に、独立した機能を持った集中治療室として発足しました。病棟新設などによって規模は拡大し、2013年より現在の体制となっています。現在、麻酔科蘇生科が運営する集中治療室は2病棟に合計22床あり(その他、先天性心疾患患者対象のCCU 8床など)、総合診療棟4階病棟10床は特定集中治療室管理料1の、東3階病棟12床は特定集中治療室管理料3の対象病棟となっています。
症例数は2つのICUを合計して年間約1800例です。いわゆるsurgical ICUの側面が大きく、症例の約4分の3は術後患者です。術後患者として特徴的なものは、肺移植、肝移植、腎移植などの移植後患者、さらに食道外科、心臓血管外科、頭頚部外科などの高度侵襲手術術後患者が挙げられ、様々な症例の周術期管理を行っています。内科的にも幅広い症例があり、敗血症、肝不全、腎不全、心不全、血液疾患、神経疾患など、集中治療が必要な症例が院内外の各科よりコンサルトされてきます。さらに、成人のみならず小児症例も多く入室します。
体制
診療体制としては、2つのICUそれぞれに専従する医師を置き、いわゆるclosed ICUとして運営しています。専従医は2週間交代での週番制としており、一貫性のある治療を行うことができるような体制をとっています。
ICUに入室した患者の治療方針は、主科主治医と議論しながら週番のICU専従医を中心に決定し、治療はICU担当医が責任をもって行います。必要時には他科専門科にコンサルトし、各診療科、各部署と連携した診療を行います。設備としても、人工呼吸・腎代替療法・血漿交換・ECMOなど必要な加療が24時間行える設備が整っています。ソフト面でもハード面でも、どのような重症患者にも最適の医療をいつでも提供できる体制が整っているといえます。
チーム医療
日々の診療は、毎朝の回診で一日の方針を確認することから始まります。また、早期離床・リハビリテーションのラウンドも毎日行っています。さらに、毎日夕方にICUカンファレンスが行われます。加えて、特に重症な症例や長期間入室になっている症例では、日々のカンファレンスとは別に適宜合同カンファレンスを行い、その時点での問題点をまとめ、短期・中期・長期の目標設定や方針を決定します。これらの回診やカンファレンスは、麻酔科、主科、ICU看護師、病棟看護師、薬剤師、臨床工学技士、理学療法士など多職種合同で行っており、集中治療医が主導しながら、縦横斜めの関係をフルに生かして、チーム医療を実践しています。
研究
治験など、臨床研究にも力を入れており、多数の研究が同時に進められています。企業とのコラボレーションも増えてきており、世界規模の研究の一翼を担う機会も増えています。また、2018年に入りICU運営システムの変更が行われたこともあり、データベース構築などデータ管理能が増強されたことも研究推進の追い風となっています。さらに、麻酔科蘇生科に所属するクリニカルリサーチコーディネータ(CRC)などの研究専属スタッフが年々増員されており、臨床研究をすすめる体制が整えられています。
教育
当科若手医師を集中治療の専門医に育成すべく、専従期間を設置して知識・手技の取得を目指しています。ICU看護師に対しては、当科スタッフによる講義を通じて、ICU治療対象病態や治療デバイスの解説を行っています。また、全国の若手医師に向けても、当科主催の各種セミナーを行うことで麻酔や集中治療の面白さを伝え、興味を持ってもらえる内容を発信しています。
岡山大学ICUの使命
上述のようなICUを取り巻く環境の中で我々集中治療部の使命は
- 一人でも多くの患者さんを元気に退室してもらう。
- 術後患者の重篤な合併症を減少させる。
- 患者さんやご家族が満足できるサービスを提供する。
- 大学病院のICUとして、広く研究・教育に取り組む。
岡山大学病院ICUの卓越性
1)充実したスタッフ
岡山大学病院ICUの卓越性の最も大きなものは、充実したスタッフです。指導する立場の医師の多くは、海外留学にて臨床の現場をみてきた経験を持っています。そのような指導者が複数名いる日本でも稀有な施設の一つです。彼らは臨床のみならず多くの臨床研究を実践・指導しており、論文投稿や海外学会での発表を積極的に行っています。いわゆる世界レベルで仕事のできる医師がいるのは、岡山大学ICUの特筆すべき特徴です。
2)豊富な症例数
もう一つの特徴は、その症例の多様性と豊富さです。成人・小児を問わず、術後患者や内科系疾患患者の全身管理、移植患者の術前術後管理など、さまざまな症例があります。総合病院であるため全ての診療科が存在すること、また岡山大学関連病院が数多くあることが理由の一つです。それぞれの科からコンサルトを受け、またこちらからコンサルトしながら、どのような重症患者にも対応できる体制をとっています。