研究の概要
 
ショック時の病態解明と新しい治療法の開発
 
 
Announcement from OKAYAMA to the World !
 
Bench-Top to Bedside ̄
 

 ショックに対する急性期の治療は、輸液・輸血療法、薬物療法、モニタリングの発達により、ほぼ、完成の域に達したと考えられるが、ショックに引き続いて発生する臓器不全の病態は未だ完全に明らかでなく、決め手となる治療法は未だ無い。我々のグループではショック時の細胞保護の観点から、臓器不全に対する新しい治療法の開発に取り組んでいる。

 ショック後の臓器不全には、虚血-再還流や組織に浸潤した好中球によって引き起こされる酸化ストレスがその病態生理に大きな役割を果たしている。細胞は酸化ストレスに曝されると自らを防御するためにストレス蛋白を作り出す。我々は、ストレス蛋白の一つである”ヘムオキシゲナーゼ”に着目し、ショック後の臓器障害において果たす役割について研究してきた。これまで、ラットのショックモデルにおいて内因性に誘導されたヘムオキシゲナーゼがショックによる酸化ストレスから細胞を保護するために必須の蛋白であることを明らかにした。また、グルタミンなどの臨床応用可能な物質がヘムオキシゲナーゼの誘導物質であることを見出し、これらの物質によるヘムオキシゲナーゼの発現調節が臓器不全を改善するとともに、生存率の上昇につながることを示した。現在、これらの成果を臨床の現場における新しい治療法の開発につなげるべく研究を進めている。

 我々の研究実績は国際的にも認められており、現在、米国ピッツバーグ大学から研究資金を導入して共同研究を行っている。また、米国ハーバード大学を主管とする“ヘムオキシゲンナーゼ国際研究委員会”のメンバーとしてこれからの世界のヘムオキシゲナーゼ研究の歩むべき方向性を探っている。

さらに, 最近ヘムオキシゲナーゼの酵素反応産物である一酸化炭素(CO)がストレス下ではヒトの体内で生成され、呼気のCO濃度の上昇として捉えることができるのではないかと仮説を立て、臨床研究を行ったところ、術後やICUの重症症例では呼気CO濃度が上昇していることを見出した。現在、これらの呼気CO濃度と病態との関連をさらに追及している。

 
 
 
   我々の研究実績は国際的にも認められており、現在、米国ピッツバーグ大学、ニュ―ヨーク医科大学、英国ロンドン大学から研究資金・物質を導入して共同研究を行っている。これらの研究成果は全て英文論文とし世界に発し、ストレス蛋白の国際的臨床応用に向けて取り組んでいる。
 
 
 
 
急性臓器不全
 
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脳蘇生に関する研究
 
[研究の概説]
  近年、医学の進歩により心停止蘇生後の救命率が飛躍的に向上しました。しかし、その一方で心臓の蘇生には成功したものの、意識が戻らず「植物状態」に陥る患者さんの数も増加してきました。当教室では、一人でも多くの患者さんの意識状態を改善するため、1986年より「脳蘇生」の研究を開始しました。脳蘇生の研究で最も困難なことは、死滅した神経組織は再生しない点です。つまり、生き残った神経細胞で機能を回復していかなければいけません。このため、脳蘇生の治療は「虚血後に死滅していく神経細胞を保護し、残存する神経細胞数を増加させること」を目的としています。
 
  集中治療室では「脳圧」、「脳内酸素飽和度」、「脳波」を指標として脳循環管理を行い、薬剤や軽度低体温療法を用いて治療を行っています。また最新のMRI(画像診断装置)を用い、早期に脳障害の進行を検出し、治療方針の決定に役立てることを試みています。

研究室では脳内微細電極やin vivo fluorescence imaging、MRI等を用い、虚血再潅流時の神経細胞の膜電位の変化を観察し、治療法の開発に取り組んでいます。
 
[テーマ別研究課題]
  選択的脳冷却法を開発し心停止蘇生後の意識障害を軽減する
心停止蘇生後の脳障害を抑制するため選択的脳冷却法の開発を行っています。咽頭(ノド)のすぐ外側には頚動脈があり脳に行く血液が通っています。更に外側には経静脈があり心臓に返る血液が通っています。従って、首を外側から冷やすと心臓に返る血液が冷却され全身温が低下しますが、内側(咽頭)から冷やすと脳に行く血液が冷却され脳温が選択的に低下します。私たちは咽頭に挿入したカフに冷却液を灌流して脳を選択的に冷却するシステムの開発を行っています。蘇生時に心臓を冷やすことなく、脳を選択的に冷却することを目的としています。

● 麻酔薬の脳保護効果を定量的に調べる
麻酔薬には脳保護効果があることが知られています。しかし、どの麻酔薬が一番強い脳保護効果を持っているのか分かっていません。私たちは麻酔薬の脳保護効果を定量的に調べ、作用機序を解明し、安全な麻酔法の開発を行っています。

● 脳梗塞治療法の開発
脳梗塞の治療法を開発するためには、梗塞巣の広がりを観察するシステムが必要です。酸素が足りなくなるとミトコンドリアの酸化還元状態が還元側に傾きミトコンドリア内にNADHが蓄積します。NADHは紫外線で励起すると青色の蛍光を発します。私たちはこの原理を応用し、脳梗塞の広がりをリアルタイムに観察できるシステムを開発しました(再生ボタンを押すとと、ラットの左大脳半球で梗塞巣が拡大していく様子を動画で見ることができます。)。このシステムを使用し、脳梗塞治療法の開発を行っています。


● 高気圧酸素痙攀の原因を調べる

3気圧以上の酸素に長時間暴露すると痙攀を発症することがあります。私たちは高気圧酸素タンク内でマイクロダイアライシス法を施行し、脳内神経伝達物質の濃度変化を調べ、痙攀の原因を調べています。
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疼痛に関する研究
2008年3月の現況
 
[研究の概説]
  痛みはもっとも基本的な患者さんの症状であり、重要な疾患のサインでもあります。しかしながら、基礎的な研究に関して申せば、非常に遅れていた分野でもあります。それは実験モデルの確立の困難さ、客観的指標の欠如など情緒・感覚としての疼痛を科学的に研究することが非常に難しかったことが一因と考えられます。また、従来より考えられていた、生理的な侵害反応としての痛みでは説明の付かないいわゆる神経因性疼痛の存在そのものが研究者を“科学的でない”との偏見から研究対象から遠ざけていたことも事実かと思います。しかしここ十数年、痛みの研究は目を見張るほどの進展をとげ、今まさに脳の時代の最先端の研究になろうとしています。当教室でも基本である行動観察はもちろんのこと、分子生物学的、免疫組織学的手法を取り入れ、疼痛に関する研究にここ数年取り組んでいます。

● 疼痛の機序に関する研究
各種疼痛モデルを作成し、根神経節および脊髄レベルでどのような変化が生じているかを分子生物学的、免疫組織学的に検討することで、その機序の解明につとめています。このことが新しい難治性疼痛治療の基本となるからです。今までに術後痛モデル、炎症性モデル、脊髄神経結紮モデルなどでreal-time PCRにより後根神経節での各種疼痛関連遺伝子のmRNA出現の変化や脊髄レベルでの蛋白発現を観察し、機序を解明するとともに治療戦略の基礎としてきました。今後さらに、癌性疼痛、虚血痛、帯状疱疹後神経痛などの臨床上治療が困難な疼痛の動物モデルの確立を目指しています。

● 痛みの遺伝子治療の応用開発に関する研究
痛みの刺激が細胞内情報伝達、タンパク発現に影響を与えていることが徐々に明らかとなっています。遺伝子治療を応用して難治性疼痛を治療することは理論的には可能な時代となっています。たとえば、脊髄内に疼痛抑制の内因性物質を常時高濃度で出現させたり、逆に疼痛を惹起する物質の出現を抑制することも遺伝子治療の一環として現在基礎研究を始めています。
とくに我々はここ数年、神経栄養因子に焦点を絞り、その発現を脊髄の後根神経節および脊髄レベルで研究しています。その中でもBDNFが急性および慢性疼痛の形成に大きな役割を果たしている点に注目し、各種モデルで後根神経節でのmRNAおよび脊髄レベルでの蛋白発現の変化を観察しています。さらに、BDNFの各エクソンのクローニングにも成功し、それぞれのエクソンがいかなる疼痛時に発現するかを検討しています。現在、遺伝子療法の手法を取り入れ、痛みに関連している物質のノックダウンを応用した治療戦略の基礎段階に入っています。それに関連した特許も申請中です。
[テーマ別研究課題]
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心臓生理に関する研究
 
[研究の概説]
[テーマ別研究課題]
  小児開心術後のthermodilution法による心拍出量に関する研究
Fontan手術後の早期抜管に関する研究
先天性心疾患術後管理の新しい指標に関する研究
(C) 2007 Okayama University Graduate School of Medicine, Dentistry, and Pharmaceutical Sciences
Department of Anesthesiology and Resuscitology