岡山大学病院集中治療部(ICU)

概要

 

岡山大学病院集中治療部は1971年に日本で初めて集中治療室としてのシステムを備えたICUとして開設され、2007年現在、計10床のICUとして稼働中です。年間入室患者数は約600例で、主に人工呼吸、血液浄化、循環作動薬などの治療が必要な患者様の治療に当たっております。2008年4月には新病棟の完成に伴い、新たに18床のICUが新設予定で、計28床の日本で最大規模であり、欧米のICUと比較してもひけをとらないICUが完成する予定です。

 

麻酔科主導のICU

 

岡山大学病院集中治療部の特色は、麻酔科主導のICUであることが挙げられます。当然入室患者の内訳は80%以上が外科系患者となりますが、術前、術中、術後とTotalに周術期管理を行えるICUは日本でもそう多くはないでしょう。周術期管理のみならず、敗血症、急性呼吸不全、急性腎不全などの入室も多く、各種不全臓器に対するサポートも可能です。高度先進医療を行う総合病院のICUとして24時間体制で、すべての患者に対応できる体制が整っています。また、治療方針の決定、薬剤や機械的サポートの必要性など、ICUにおける判断、治療は麻酔集中治療医が行います。かといって主治医を排除するのではなく、綿密なdiscussionの上で患者様にとって最高の医療を提供できるように心がけております。このような麻酔科主導のICUにおいて主治医との良好な信頼関係が保たれているのは、35年以上にわたる献身的な診療の賜物でしょう。

 

移植術後管理

 

当院ICUでは年間50例近い移植患者が入室致します。生体肝移植35例程度、肺移植10例程度です。当然移植手術は外科医の技量によるところが大きいのですが、術後管理もperfectでなければ、患者予後は改善しません。当院では肝臓、肺移植ともに80%を超える生存率を誇り、これは世界でもトップクラスです。移植手術の術後管理においても、外科医との綿密な計画のもとに麻酔集中治療医が主導で術後管理に当たっております。このように困難とされる移植手術の術後管理も麻酔集中治療医が主導で行われている施設は多くはないでしょう。

 

ICUラウンド、ICUカンファレンス

 

当院ICUでは患者様に最善の医療を提供するため、主治医、麻酔集中治療、看護師が協力して治療に当たっています。毎朝行われるICUラウンドでは、主治医、看護師とともに現在の患者の問題点、本日行われるべき治療、治療方針の決定が行われています。特に看護師と麻酔集中治療医の話合いを重視し、患者・家族に満足のいく治療の提供を心がけています。また、毎週月・水・金の夕方にはICUカンファレンスが行われ、当院麻酔科が誇る優秀なstaff陣と、研修医、看護師、理学療法士なども参加し、活発な議論が行われています。ICUラウンド、ICUカンファレンスを通じて、独りよがりではなく、チームとしての医療を心がけております。また、定期的に死亡症例、ICU入室患者状況、ICU在室日数、人工呼吸期間、病院死亡率などを検討し、現在のICUにおける問題点、改善点などを検討し、日夜進歩を続けております。

 

Evidence based medicine (EBM)
集中治療領域においてはまだまだEBMが浸透しているとはいえません。当然ICUの治療に関してすべての判断をEBMに従って行うことは不可能です。しかし我々麻酔集中治療医は最新の知見を知り、できるだけそれを取り入れるようにしなければ、ICUの進歩はないと考えます。当院集中治療部では、集中治療領域における最新のpaperをstaffに配信し、evidenceを吟味することにより、我々が何をすべきかを検討しています。
 

最近のpapers
1. Lacroix J, Hebert PC, Hutchison JS, et al. Transfusion strategies for patients in pediatric intensive care units. N Engl J Med 2007;356:1609-1619
2. Halonen J, Halonen P, Jarvinen O, et al. Corticosteroids for the prevention of atrial fibrillation after cardiac surgery: a randomized controlled trial. JAMA 2007;297:1562-1567
3. Francois B, Bellissant E, Gissot V, et al. 12-h pretreatment with methylprednisolone versus placebo for prevention of postextubation laryngeal oedema: a randomised double-blind trial. Lancet 2007;369:1083-1089
4. Finfer S, Bellomo R, McEvoy S, et al. Effect of baseline serum albumin concentration on outcome of resuscitation with albumin or saline in patients in intensive care units: analysis of data from the saline versus albumin fluid evaluation (SAFE) study. BMJ 2006;333:1044
 

Research activities
当院ICUでは海外での臨床・研究経験豊富なstaff達により多くの臨床研究が行われています。2004年からは特に海外での学会発表にも力を入れ、年間10題程度の国際学会での発表を行っています。国内の学会では、血糖管理、血液浄化、循環作動薬、感染症、移植などの分野で多くのstaffがシンポジストとして発表し、日本におけるオピニオンリーダーとして活躍しています。治験にたよるのではなく自主研究を行うことにより多くの成果を挙げています。岡山から世界に向けて情報を発信することが我々の目標です。
 

近年行われているまたは行われた研究です。
1. 小児心臓手術後患者における腹膜透析の検討
2. 生体肝移植術中の呼気一酸化炭素濃度に関する研究
3. 小児心臓手術後患者における再挿管の危険因子
4. 重症患者における呼気一酸化炭素濃度に関する研究
5. 播種性血管内凝固に関する研究
6. 小児集中治療患者スコアリングの小児心臓手術後患者への応用
7. 輸液負荷に関する国際多施設調査
8. 敗血症を原因とした全身性炎症反応症候群に伴う急性肺障害に対する好中球エラスターゼ阻害剤の比較臨床試験
9. トラネキサム酸の小児心臓術中術後出血におよぼす影響
10. 集中治療管理中の血液流動性の変化
11. 心臓手術における術中・術後における血糖値変化とその臨床的意義の検討
12. 高血糖を合併する食道癌術後患者での周術期血糖管理に対する糖質調節流動食と一般流動食の比較研究
13. 急性腎不全を伴う重症患者に対する大量置換CHDFの予後改善効果
 

2006年ICU入室患者のまとめ
 
入室数
581名
平均滞在日数
6.0 (5.2 to 6.8)日
平均年齢
55.5 (53.7 to 57.2)歳
性別(男性)
60.6%
APACHE II score
11.7 (10.9 to 12.4)
人工呼吸
232例(39.9%)
血液浄化
43例(7.4%)
院内死亡率
6.0%
平均と95%信頼区間
APACHE II scoreは24時間以上滞在したもののみ算出
 
 
   
 
   
 
   
   
   

循環器疾患治療部(CCU)

 

1990年の岡山大学病院における小児心臓手術の開始に伴い、その周術期管理を集中治療部で行うようになりました。当初年間130症例前後であった小児心臓手術症例数も年々増加し1995年には200症例を超えるまでに至りました。その結果、general ICUである定数8床の集中治療部のみでは多くの小児心臓手術の周術期管理を行うことは困難となってきたため1996年に定数4床の循環器疾患治療部として独立してここでその周術期管理が行なわれるようになりました。さらなる症例数の増加に伴い、現在では定数は8床となり年間300症例以上の小児心臓手術の周術期管理を行っています。

 
PICU入室患児
ECC
251
non-ECC
62
cardiac catheterization
128
ASO Amplatzer
85
other
22
562
Surgical
313
Medical
249
 
 
年度別小児心臓症例
 
  われわれは、患児がCCUにおいて体外循環を含めた大きな外科侵襲によってうけたダメージから回復して人工呼吸器から離脱し簡単な点滴だけで状態が安定するようになるまで術後管理を行います。岡山大学病院の小児心臓手術症例の特徴は、一般には多数を占める心房中隔欠損症、心室中隔欠損症、動脈管開存などの単純心奇形症例が少なく複雑心奇形症例がその70%近くに達しているとともに新生児症例が20%近くを占めることです。したがって体重が2kgあまりの左心低形成症候群のような複雑心奇形開心術後患児の管理を行うことも日常茶飯事です。そのためCCUでの患児の管理には高度な技術に加えて新生児特有の生理や複雑心奇形に対する理解など深い知識が要求されます。周術期管理には細心の注意を要しますが、出来るだけミスを少なくするためにシンプルで統一された管理を行うようにしています(小児心臓麻酔マニュアルへ)。われわれは従来より手術室での抜管を含む早期抜管を目指しておりFontan手術、Bidirectional Glenn手術をはじめ多くの症例が術後数時間の間に抜管され、自発呼吸で管理されています。
 
 
平成19年度 疾患別症例数
ASD
18
IAA complex
8
TGAII
1
VSD
61
  TA
11
  TGAIII
2
TOF
24
  CoA complex
14
  c-TGA
3
PA VSD
22
  HLHS
14
  PAPVC
1
DORV
39
  SV
11
  CoA
1
AVSD
25
  Truncus
6
  other
24
PA/IVS
9
  PDA
5
 
313
TAPVC
12
  TGAI
2
 
平成19年度 術式別症例数
ASD Closure
15
PAB
12
VSD Closure
52
  RVOTR
12
Total Repair
50
  Norwood (RV-PA)
6
Fontan
35
  Bil PAB
5
BDG
24
  other
74
BT Shunt (on,off pump)
17
 
302
 
  CCUは小児心臓手術の術後管理が主な役割ですが、近年ヘリポートの運用も開始され近隣の病院はもとより高知、島根など他県からの全身状態の悪化した先天性心疾患患児の緊急入院への対応も稀ではありません。安全に心臓手術に望むために、これらの患児の全身状態を安定させるのもCCUの役割です。また大学病院では新生児、若年小児あるいは全身状態のよくない先天性心疾患患児に対する心臓カテーテル検査を全身麻酔下に施行しています。CCUではこれらの全身麻酔を受けた患児の術後観察をおこなう回復室としても機能しており年間200症例近くの患児を収容しています。
 

(C) 2007 Okayama University Graduate School of Medicine, Dentistry, and Pharmaceutical Sciences
Department of Anesthesiology and Resuscitology