伝達麻酔を受けられる方へ

伝達麻酔とは

手術でメスをいれる皮膚から脊髄の間で、痛みを感じる経路を局所麻酔薬を用いて遮断する方法です。多くは手、足の手術で用いられ、主なものに腕神経叢ブロック(手)、大腿神経ブロック(足)、坐骨神経ブロック(足)などがあげられます。手術を行う体の部分によって伝達麻酔の種類が異なりますので、どの種類の伝達麻酔を行うかは担当麻酔科医にお尋ねください。近年は手術後の痛み止めとして用いるために全身麻酔に併用することが多くなっています。また超音波エコーを用いることで安全かつ確実に伝達麻酔が行えるよう配慮しています。

伝達麻酔の実際

手術室に入室されたら、まず心電図、血圧計、パルスオキシメータを体につけ、点滴を取ります。ここまでの流れは全身麻酔を行うときと同様です。その後伝達麻酔を行う場所を消毒し、皮膚の局所麻酔を行います。超音波エコーを皮膚に当て、目的となる神経に向かって針を進めます(伝達麻酔の種類によっては電気刺激を用いることもあり、その場合はぴくぴくと手足が動きます)。目的となる神経に針が到達したら少しずつ局所麻酔薬を入れます。手術後の痛み止めとして用いる場合には局所麻酔薬を入れたあとに神経のそばにビニールの細い管を入れておき、手術後にも局所麻酔薬を入れることができるようにする場合もあります。伝達麻酔のみで手術を行う場合は、局所麻酔薬を入れたあとに10分から20分程度待っていただき、痛みが取れるのを確認してから手術の準備に入ります。全身麻酔に併用して用いる場合は伝達麻酔を行ったのちすぐに全身麻酔で眠っていただきます。
なお、万一の神経障害を予防するために、現在は全身麻酔に併用する場合でも原則伝達麻酔は患者さんが覚醒している状態で行っています。眠ってから伝達麻酔をしてほしいというご意見もありますが、より安全に伝達麻酔を行うためにもご協力をお願いします。

伝達麻酔を受けられるにあたって

手術が終わったのちも数時間は伝達麻酔が効いている場所のしびれが残ります。また手術後の痛み止めとして使う場合は痛み止めの作用が効いている間しびれが続くことがあります。
また、手術時間が予定より長くなった場合などには途中で痛みが出ることがあります。このような場合には適宜鎮痛薬を追加して対応しますが、やむを得ず手術中に全身麻酔に移行することもあります。そのため術前診察をはじめ手術前の絶飲食を含む手術前の指示は全身麻酔に準じて行います。