脳虚血の基礎研究

脳は電気生理学的な反応に基づいた情報処理がその臓器機能です。情報処理はシナプスを介した神経細胞同士の微妙なバランスの上に成り立っており、現在の医療でその興奮性を高めたり抑制したりすることは可能ですが、機能平衡の改善を目的とした薬剤や治療法は存在しません。それゆえ虚血性脳傷害の急性期においては「いかにこれ以上神経細胞を死滅させないか」という治療が主体となります。つまり虚血性脳傷害の治療においては、一次性傷害の抑制と脳保護治療の早期開始が重要です。

実際の臨床現場では心肺停止状態での全脳虚血やくも膜下出血後の脳傷害により、神経予後、生命予後は極めて悪化しうると考えられます。しかしながら、まだまだ不明なことも多く治療が確立しているとは言えません。脳虚血グループでは、ラットを用いた動物モデルを使用して、全脳虚血やくも膜下出血による脳傷害に対する影響やその治療に関する研究を行っています。

  • ▪両側頸動脈絞扼と脱血による脳虚血モデル
  • ▪電極刺激による心室細動心停止モデル
  • ▪自己血注入によるくも膜下出血モデル

これらの動物実験モデルを使用し、脳虚血の一次性傷害に着目した研究を行っています。脳血流量、細胞外電位、脳波、細胞外グルタミン酸濃度、体温・硬膜外温などの測定と組織学的な評価を行い、脳虚血とくも膜下出血後の脳傷害の実態解明を試みています。

また、臨床研究として脳低温療法のための咽頭冷却デバイスの開発を行い、実際に臨床応用されています。